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スパイスの抽出温度とスパイスの成分の体感温度

はじめに

古いヨーロッパの格言に「男の価値は本棚の内容で見分け、女の価値はスパイスの棚の中身できまる」というものがあります。

まあこの

Anovaで低温調理をはじめて、スパイスも香り成分を最大限抽出できる温度を知りたいと調べ始めました。

とりあえず現時点でこういう情報もあるのかと参考になりそうな情報をまとめてみました。

スパイスを効率的に抽出できる温度、スパイスの成分が溶け込むのが水溶性か脂溶性か、スパイスによる体感温度などなど、

さすがスパイスは奥が深いなと。

スパイスを効率的に抽出できる温度

スパイス名人宣言 (日曜日の遊び方)によると、スパイスが効率的に抽出できる温度帯があるようで、

もっぱら30-80℃で抽出するのがよいとか。

これからはスタータースパイスを油から抽出するときも、コールドスタートからの低い温度帯で抽出できるスパイスから入れるなど試行錯誤に使えそうな情報です。

抽出温度 スパイス
40℃群 カルダモン、キャラウェイ、シナモン、ジンジャー、スターアニス、フェンネル等
40‐50℃群 オールスパイス、コリアンダー、クミン、クローブ、タイム、ナツメグ等
50℃群 セージ、セロリ等
60℃群 ニンニク、胡椒等
100℃群 とうがらし

Anovaで低温調理でスパイスの成分を抽出したりしても面白いかもしれません。

アノーバ Anovaプレシジョンクッカー2.0(Bluetooth対応) 800ワット 低温調理器

スパイスを抽出するときの、脂溶性と水溶性の違い

そう考えていくと、スパイスの成分を何に抽出すればいいか気になるわけですが、あまから手帳「7限目「香りの性質」」によると香気成分は下記の通り。

香気成分表

スパイス 香気成分 性質
ローズマリー シネオール 脂溶性
バジル メチルチャビコール 脂溶性
とうがらし カプサイシン 脂溶性
胡椒 リモネン、ピペリン 脂溶性
クミン クミンアルデヒド 脂溶性
ターメリック αフェランドレン 脂溶性
コリアンダー αフェランドレン 脂溶性
シナモン シンナムアルデヒド 脂溶性
サフラン サフラナール 脂溶性
八角 アネトール 脂溶性
ニンニク ジスルフィド・トリスルフィド 脂溶性
松茸 マツタケオール 脂溶性
トリュフ アンドロステノール 脂溶性
干しエビ チアルジン 水溶性

あまから手帳「7限目「香りの性質」」を参考に作成

表を作りながら、脂溶性がほとんどで性質の欄いらなかったかなと、無理くりの干しエビです。

トリュフのアンドロステノールはフェロモン香水にも使われる成分です。

トリュフ採りには雌豚をつかいますが、雌豚はこのフェロモン成分に引き寄せられてトリュフがある場所まで導かれるそうです。

意中の女性を落としたいときに、フレンチに連れて行ってトリュフがたくさん乗った料理を食べるか、フェロモン香水を使うかというのは多分成分ベースでは香水の方がコスパがいいんでしょうね。

しかしながら、物よりも経験を買う方が持続的な幸福感をもたらすということが研究からわかっていることから、食事に連れていくことの方が複合的に良さそうですね。

まあ横綱相撲するならフェロモン香水を振って、フレンチにいけばいいのでしょう。

ちなみにアルコールは脂溶性も水溶性も溶かし込む性質があります。

なので両方からいっぺんに抽出したい場合は、アルコールで抽出すれば解決ということです。

アルコールの沸点が78℃であることを考えると大半のスパイスの成分はいい感じに抽出できそうですね。

ちなみにアルコールを入れて火にかけた際の残留アルコールは下記の通り。

アルコールを入れた後の残留アルコール

加熱時間 残留アルコール
15分 40%
30分 35%
60分 25%
120分 10%

Cooking for Geeksを参考に作成

結構残るもんですね。

スパイスの成分がもたらす体感温度

スパイスの成分は人体の受容メカニズムに働きかけます。

たとえば、ミントウォーターを飲むと体がすっきり冷えたと感じたり、

ホットワインを飲むと体の奥からあったまったり

Anovaで作るホットワイン(Mulled wine)

このようなスパイスの体感温度について、1997年にDavid Juliusらによって発見され、辛みの受容体はVR1と名付けられました。現在ではTRPV1と呼ばれています。

温度感受性チャネルはほかにも多数あり、スパイスの成分は我々の体感温度に働きかけます。

マウス実験ではラットにカプサイシンを与えると熱放散が観測され、

メントールを与えたところ、熱産生がか高まったそうです。

これは、スパイスによって体感した温度に対して体が反応したということだと考えられます。

つまり、カプサイシンを受容して、体感温度が上がり、それを下げるため熱放散が行われ、

メントールを受容して、体感温度が下がり、それを上げるために熱産生が高まったと――

スパイスは奥が深いですね。

 

温度感受性チャネルとスパイス

温度感受性チャネル 活性化温度閾値(℃) スパイス 成分
TRPV1 43< とうがらし カプサイシン
TRPV1 43< CH19甘 カプシエイト
TRPV1 43< しょうが シンゲロール、ショーガオール、ジンゲロン
TRPV1 43< 黒コショウ ピペリン
TRPV1 43< クローブ オイゲノール
TRPV1 43< 山椒 サンショオール
TRPV1 43< ワサビ アリルイソチオシアネート
TRPV3 32-39< タイム チモール
TRPV3 32-39< オレガノ カルバクロール
TRPV3 32-39< クローブ オイゲノール
TRPM8 <28 ペパーミント メントール
TRPM8 <28 ローレル シオネール
TRPM8 <28 ローズマリー シオネール
TRPA1 <17 ワサビ アリルイソチオシアネード
TRPA1 <17 シナモン シンナムアルデヒド
TRPA1 <17 ニンニク アリシン、ジアルジスルフィド
TRPA1 <17 黒コショウ ピペリン

「スパイスの化学受容と機能性」を参考に作成

おわりに

スパイスは奥が深い。

まさに沼です。

だからこそ、様々な研究があるんですね。

ぼちぼち攻略していきたいところ。

参考資料

あまから手帳「7限目「香りの性質」」

日本調理科学誌 Vol.46 No.1 1-7(2013) スパイスの化学受容と機能性

スパイス名人宣言 (日曜日の遊び方)

 

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