はじめに
謎の勢力「抱っこすると抱き癖がついて甘えん坊になるよ!」
巷でまことしやかに流れている俗説です――
抱っこする→抱っこを欲する→甘えん坊になる・甘い親になる。
なるほど、確かに理屈はとおっているような気がしてしまいます。
しかし果たして本当にそうなんでしょうか。
調べてみました。
僕としては、甘えてきたら抱っこしたかったので。
実際には甘えさせる方がメリットが多かった
調べれば調べるほど、抱っこすることのメリットが見えてきました。
抱っこすると幸せホルモンがドバドバ
抱っこすることで、幸せホルモンオキシトシンの分泌が促されます。
オキシトシンの働きで、ストレスホルモンの値が下がり、赤ちゃんがリラックスします。
肌と肌で接することで、幸せホルモンにより子供は安心感が増し、母親は幸福感からまた抱っこしたい等良いスパイラルが生まれます。
またスキンシップの重要性を示すデータとして、生後4カ月の赤ちゃんに毎日8分マッサージをしたところ、そうでない子供に比べて以下の特徴が現れました。
- 機嫌がいい
- 不安とストレスが少ない
- 注意力が高い
- 睡眠パターンが整っている
とくに、注意力が高いというのと睡眠パターンが整うのは親としては魅力的ではないでしょうか。
注意力が高ければ時間がかかりがちな離乳食の時間が短くなります。
そして、睡眠パターンが整えば親も――おそらくまとまった時間眠れはしないでしょうが――決まった時間に眠ることができるでしょう。
睡眠不足は体にもメンタルにもよろしくありません。
睡眠中に脳のガベージコレクション機能(ごみ掃除)でアミロイドβタンパク質が洗浄されますが、十分な睡眠がとれなければ
ゴミが蓄積します。
このアミロイドβタンパク質は認知症の脳に多く見られることから、睡眠不足が脳に悪いのは間違いありません。
そして、メンタルにもよくありません。
睡眠不足は余裕(やさしさ)を削っていきます。親子関係にいい影響を与えることはありません。
「スタンフォードの自分を変える教室」の中で、ケリーマクゴニガルは睡眠時間が6時間未満となるような睡眠不足は脳のエネルギー不足を巻き起こして軽度の前頭前野機能障害に近い状態となり、脳は酩酊状態と同じレベルまで機能が落ちると指摘しています。
結果、感情をコントロールしたり、意識を集中させたりするのが難しくなるそうです。そうなると日常的なストレスへの耐性が落ちて、些細なことでイライラしたりそれがまたストレスになります。
スキンシップで子供に愛されている、大切にされているという自信を育てる
スキンシップによって子供は愛されている、大切にされているという自信を得ます。
「世界標準の子育て」によると、根拠のない自信は親との関係性からはぐくまれるもので、その後の成長のベースとなる重要な支柱となります。
とくに0歳から6歳児において、この「根拠のない自信」を育てるのに重要となるのがスキンシップであると指摘しています。
スキンシップをすることで愛されている自信が子供の中で育まれ、不安な子供にありがちな不要な甘えが減っていくわけです。
そういう意味では、抱っこする子は甘えん坊になるというのは一見正しいようですが、誤っているのではないかと考えられます。
DNAがいい方向に変貌する、という研究結果もあります
カナダのブリティッシュ・コロンビア大学の研究によると、子供との接触の頻度が遺伝子に大きな影響を与えることが分かりました。
研究によるととくに、免疫、代謝にかかわるDNAに大きな差が出ることがわかっています。
つまり、抱っこしてあげることで子供に後天的に病気に対して強い子にすることができるということです。
まさに親冥利に尽きますね。
生まれた時点は母の天分、生まれた後にどういう能力を備えるかは親の責任です。
知性や身体能力もさることながらまずは健康に育てたいということが第一。
どうせ抱っこするなら抱っこしながら歩いた方がいいみたい
輸送反応で子供がリラックスするよ、という話。
娘もエルゴ合体して立っているとご機嫌で、寝たらゆっくり寝てもらうように膝立ちでPCする始末。
スタンディングスツール買ってPCおこうかな。
そうすればエルゴで抱っこしながら、ステッパーで運動しつつ、ブログ書ける。
楽しそう笑— コモド (@comodo_dev) 2018年12月8日
理化学研究所の研究によると、
生後5か月以内の子供を抱いて立った状態と歩いた状態で赤ちゃんの反応を調べたところ、
座ったときに比べて、抱っこしながら歩くと、泣く量が10分の1になり、自発的な動きも5分の1に、
さらに歩き始めて3秒程度で心拍数が顕著に低下することがわかりました。
抱っこしてお散歩することで、赤ちゃんがリラックスすることが科学的に証明されました。
これは哺乳類には転送反応と呼ばれる仕組みによるものです。
おさるさんもよく子供が親に引っ付いて歩いていますね。
「歩いているときは座っている時に比べて、赤ちゃんの泣く量が約10分の1、と自発運動の量が約5分の1に低下し、心拍数は母親が歩き始めて約3秒程度で顕著に低下しました」
抱っこして歩くと赤ちゃんがリラックスする仕組みの一端を解明 | 理化学研究所https://t.co/FKl53KPGL0 pic.twitter.com/G5EFqY8sTs— コモド (@comodo_dev) 2018年12月8日
抱っこは親もメリットがある模様
抱っこしてオキシトシンが出るのは親も同様です。
オキシトシンによって拒食症や過食症が治るという研究もあります。
拒食と過食じゃ真逆じゃ、と思うかもしれませんがせんじ詰めれば両方ともメンタルから来ているもの。
オキシトシンがメンタルにいい影響を与える証左かもしれませんね。
たとえば、仕事でイライラしたからドカ食いする、っていうようなものがなくなるかもしれません。
さらに、オキシトシンで人見知りが治るという研究もありまして、
これで公園デビューでママ友パパ友と関係構築していかなければいけない中で、一助になるかも。
抱っこしてあげることはメリットしかない
調べてみてもメリットしかないですね。
一方で抱っこすることのデメリットを調べましたが、科学的なエビデンスがありませんでした。
まあ、筋肉痛になるなどはあるかもしれませんが、一方でカロリーが消費されるというメリットとワンセットであり相殺して差し支えないかと。
ということで、謎の勢力による「抱っこしていたら、甘えん坊になる」は無視して差し支えないかと。
というより、このロジックを否定して「抱っこしなければ、甘えん坊にならない」がそもそも成立しないというね。抱っこしないことと、甘えん坊にならないことに因果関係はないですし。
まあ、輩はほっておいて愛情をもって抱っこしたり、ベビーマッサージしてやって子供にオキシトシンドバドバで幸せな状態で生活させて、愛されている自信をつけさせてあげればいいと思う今日この頃です。
参考
In Deep「赤ちゃんは「抱っこ」など肉体的接触を数多くされるほど「DNAが良い方向に変貌する」ことをカナダの研究者たちが突き止める。その影響は「その人の健康を一生左右する」可能性も」
理化学研究所「抱っこして歩くと赤ちゃんがリラックスする仕組みの一端を解明
-経験則を科学的に証明、子育ての新たな指針に-」
BBC「'Love hormone' may treat anorexia」
パレオな男「鼻から吸うだけで人見知りが治ると噂の「オキシトシンスプレー」に効果はあるのか?」