ダレン・ブラウンとは
ダレン・ブラウンはイギリスで有名なメンタリストです。
別名「心の魔術師」と呼ばれ、心理学や催眠術を取り入れたパフォーマンスを行います。
日本でメンタリストといえば、DaiGoさんを思い浮かべますが、何を隠そうこの本、そのメンタリストDaiGoさんが翻訳したものです。
テレビのアナザースカイでイギリスを訪れた際にも、ダレン・ブラウンに会っています。
その際にダレン・ブラウンは、人に道を聞き途中で別人と入れ替わるという、人にものを教えるということに注意が向いていて、その人に注意が向いていないという注意力の盲点を突いたパフォーマンスをしていました。
番組の中でメンタリストDaiGoは、ダレン・ブラウンのショーを見た後に会い、大学時代YouTubeで彼の動画がきっかけでメンタリズムとマインドリーディングを学び始めたと想いを伝えました。
それにダレン・ブラウンはこう答えました。
メンタリズムにとって、今この瞬間が大切なんです。
自分もパフォーマンスを楽しみ、面白いと思えればそれでいいんです。
成功を追い求めていたらいつになってもそこには辿り着けないんです。
「やった、成功した!」と満足できずに、いつまでも「もっと上、さらに上!」を求めてしまいます。
だから今この瞬間に「自分が楽しめているか」それだけです。
another sky メンタリストDaiGo:伝説のパフォーマーより
――メンタリストDaiGoさんは最近テレビ出演しなくなりましたが、ニコニコ動画で5万人(2018/10/06現在)の有料会員(月額540円)を抱え、またYouTubeでもある動画で月200万は入ってきてるとそっけなく答え、書籍も多数……と大成功していますね。
本の概要
さて、この本の中で特に印象に残ったのが記憶の章でした。
メンタリストは非常に多くの知識を自在に操り、相手を観察し、心理を読みパフォーマンスを行います。
多くの知識を必要とする、メンタリスト ダレン・ブラウンが使っているのが「記憶の宮殿」です。
記憶の宮殿とは
この「記憶の宮殿」、実は様々な作品の中でも出てきます。
例えば、あまりに有名な例ですが、シャーロックホームズも記憶の宮殿の持ち主です。
シャーロックは自身の中で記憶を辿る時に両手を合わせ、瞳を閉じ、そこに記憶を格納した宮殿を呼び出します。
まるで鋼の錬金術師が錬金術を使う時に両手を合わせるようですね。
また、ハンニバルのレクター博士もこの記憶の宮殿の持ち主と言う描写がされています。
そんな誰にでもできるものじゃないんではないかと考えるかもしれません。
しかし、この方法は世界記憶力グランドマスター池田義博の著書でも紹介されていて、記憶の宮殿の作り方も確立されています。
なお「脳にまかせる勉強法」この本はAudioBookでも視聴できます。
記憶の宮殿は大きく分けて二つの記憶術を組み合わせたものです。
まず一つは関連法、そして場所法です。
関連法とは
記憶は頭の中にバラバラに存在していると特にそれが短期的な記憶であればあるほど、何か別のものが突然入ってきた場合に忘れてしまいます。
人間は大体七つの事象までは覚えてられると言われています。いわゆるマジカルナンバーセブンですね
関連法は、これらの何の関係もない単語を無理やり関連づけ覚える方法です。
ダレン・ブラウンが王家の名前を覚えるのに――
No Plan Like Your To Study History Well.(歴史をうまく勉強するのに、君たちの方法以上にいいものはない)
という文を例示しました。
これは王家の名前に変換できます。
No(ノルマン)、Plan(プランタジェネット)、Like(ランカスター)、Your(ヨーク)、To(チューダー)、Study(スチュワート)、History(ハノーバー)、Well(ウィンザード)
ではやってみましょう
たとえば、電話、ソーセージ、猿、ボタン、本という何の関係もない単語を覚えるケースを想像してください。
この単語の羅列を単純に記憶するのは簡単ではないと思います。
そして仮に覚えられたとしても30分後ですらこの単語を思い出すことができるでしょうか。
関連法では、これらの単語をそれぞれ結びつけて記憶します。
結びつけ方はAとB、BとC、CとDといった形で、それぞれの単語を結びつけます。
そして、その際には一つ一つの単語をイメージして結びつけます。
視覚化するポイントは――
まず、鮮明なものであること。
そして、その絵を、感情とリンクさせること。
例えばそのイメージが極端に気持ちが悪い、また極端に不快であればあるほど効果大です。
さらに、その視覚化したイメージが、単語と単語を結び付けていることです
そして、視覚化するものはありふれていないものが良いでしょう。
例えば、男性とコップを関連づける場合、非常に小さいコップで水を必死に飲もうとしてる男性を思い浮かべるといいでしょう。
先程の単語で例えてみましょう。
電話とソーセージ
90年代の大きな携帯電話にソーセージのストラップをつけている姿を想像します。
ソーセージは連なり、地面を擦っています。
とてもではないですが、不衛生で食べられたものではないでしょう。
平野野良風のイメージですね。
ソーセージと猿
ストラップから取れたソーセージを猿が拾い上げ、バナナと勘違いしているのか、皮を剥こうとしています。
気づいてもいいようですが、必死にむくために、歯をむき出して頑張っています。
猿とボタン
猿はあまりにもイライラしすぎて、手近にあるボタンに手を伸しました。
そのボタンにはニュークリアと書いてあります。これからおきる惨事を、想像して冷や汗をかきます。
ボタンと本
しかし、そのボタンは誤動作防止のためにフールプルーフが施されていて、解除のための本が暑すぎて読む気が起きず、うんざりします。
このようにイメージを関連付けるのが関連付け方です。
いかがでしょうか。
買い物リストやタスクリストに活用できそうですね。
場所法とは
場所法の起源は紀元前500年前後にギリシャで開催された晩餐会に招かれた、ある詩人によるものであるといわれています。
その詩人は晩さん会で、主催者を賛美する詩を読みました。しかし、神々への賞賛より主催者への賞賛が先に来たことから神々は怒り(ギリシャの神々の嫉妬深さには困ったものです)ます。
怒った神々は晩餐会が行われていた建物を破壊しました。
詩人は命からがら逃げ出しましたが、建物は崩れ、誰も生きていませんでした。
凄惨な現場でどの死体が誰なのか判別ができません。
しかしこの詩人は場所法を心得いて、テーブルと人の名前を紐付けて記憶していたため、死体の身元が分かりましたとさ――
このように、場所と物を関連付けて記憶するのが場所法です。
活用するのであれば、例えばスーパーでバルサミコ酢、レモン、キッチンペーパーを買う予定があるとしてください。
(ほかに買い物があると思いますが忘れやすいものを想像すればいいでしょう)
スーパーの入口にバルサミコ酢がぶちまけられていて、白い靴がベトベトになり怒りがこみ上げてきます。
その姿を、ショッピングカートいっぱいにレモンをのせた老婆がケタケタと笑っている姿を想像します
店員が慌ててこれで拭いてくださいと紙を差し出しますが、キッチンペーパーを差し出されたため汚れが取れずにイライラする。
このようにこの例ではスーパーの入り口で場所を完結させてしまいましたが、例えば通勤経路駅から会社まで、といった具合によく通る道乗りの中や部屋で活用するのもいいでしょう。
その際にも想像は極端で感情と紐づいているものがよいです。
記憶の宮殿
さて、記憶の宮殿はこの関連法、場所法の組み合わせです。
そして、場所の記憶は鮮明な方がいいので、記憶の宮殿に使いたい場所を頭の中に構築するときには実際に歩いたりして鮮明に構築してください。
世の中にはマインクラフト内に記憶の宮殿を作るつわものもいるようですが――
このように実際に存在する場所でも、しない場所でもそこが鮮明に想像できるのであれば構いません。
簡単に試せそうな記憶の宮殿を考えてみました。
場所、人、意味を持たないもの(数字)を組み合わせたいもの――
それはオフィスの座席と内線番号です。
座席と内線番号であれば人と数字という関連しないものを紐づける練習になりますし、
オフィスであれば比較的頭の中に記憶の宮殿として作りやすい。
内線は大体下二桁で区別されていると思うので、それを例としてやってみましょう
座席は適宜ご想像してもらってではやってみましょう。
例
内線 人物 イメージ
XX14 - Aさん Aさんがトラブルを起こして石のように固まっている姿を座席に想像する
XX28 - Bさん Bさんがにやにやしながら、今にもよだれをたらしそうなくらいディスプレイをのぞき込んでいる姿を座席に想像する
XX01 - Cさん Cさんが、オイ!っとどなりながら受話器を取っている姿を座席に想像する。
XX16 - Dさん 色男Dさんが、女子社員と内線で秘密の電話をしている姿を座席に想像する。
――いかがでしょう。
実際には例のように紐づけやすい数字ではないかもしれませんが、こうして簡単な記憶の宮殿を作ることができます。
また、ダレン・ブラウンは名前と顔を紐づけるテクニックも紹介しています。
今回例にした宮殿構築の手助けになるかもしれません。
- 同じ名前の人を思い浮かべる(有名人など)
- その人のコスプレをさせられている姿を想像する。
- 相手の名前を別の何かに紐づける
- 相手の特徴を誇張する。
- 1から4を関連付ける
では上の鈴木さんを例にしてみましょう。
彼はウド鈴木のようなモヒカンにされ、クマよけの鈴を体中につけられて歩くたびに耳障りな音を鳴らせています。
驚くことに切れ長の目が瞬きをする時にすら鈴の音が鳴ります。
ものすごい無理くりですが、とっかかりがないよりはましでしょう。
訓練すれば例示力、ディフォルメ力が向上するのでしょう。
終わりに
この記憶の宮殿を資格試験に活用できればよいでしょうが、なかなか作るのに骨が折れそうです。
日常的に少しずつ自分の宮殿を形作り、輪郭がくっきりと作れた時に広がるなにかもあるかもしれません。
ドイツの建築家ミース・ファンデル・ローエ曰く「神は細部に宿る(God is in the details)」です。